本書の著者は文筆家、大野左紀子氏です。
83年より行なったアーティスト活動を2003年に廃業、文筆活動へ。
その後ジェンダーにまつわるエッセイと、アートに関する評論の書籍をそれぞれ2冊ずつ刊行されており、本書は単著として5冊目の著作となります。

映画の中には人生も半ばを過ぎた様々な女性たちが登場します。
彼女たちの味わい深い人物造形には、私たちが歳を重ねる上での様々なヒントがあるのではないでしょうか。

取り上げる映画作品の魅力と共に、現代の女性たちへ贈るエールの数々――。

◎収録女優・映画作品
レオノール・マンソ『ルイーサ』（ゴンサロ・カルサーダ監督2008年）
ヘレン・ミレン『カレンダー・ガールズ』（ナイジェル・コール監督2003年）
キャサリン・ヘップバーン『旅情』（デビッド・リーン監督1955年）
飯田蝶子『長屋紳士録』（小津安二郎監督1947年）
カトリーヌ・フロ『女はみんな生きている』（コリーヌ・セロー監督2001年）
カティ・オウティネン『浮き雲』（アキ・カウリスマキ監督1996年）
ジュリアン・ムーア『めぐりあう時間たち』（スティーブン・ダルドリー監督2002年）
岩下志麻『疑惑』（野村芳太郎監督1982年）
ジャンヌ・モロー『クロワッサンで朝食を』（イルマル・ラーグ監督2012年）
他、全12本

私はシネフィルでも映画評論家でもありません。そこで、物語に没入した一観客の立場で、映画の中の女性たち一人一人ととことんつきあいながら書いていこうと思いました。音と映像の総合芸術である映画というジャンルを扱っているにしては、その一要素でしかない（と言っても非常に重要な要素ですが）物語に重点を置く書き方になっているのは、そのためです。注意したのは、自分の言いたいことのために作品を利用しないということ。結果、私にとってはからずも、「見えるものの意味作用を解き明かしていく作業」と、「“女”という厄介なものについて言語化する作業」の同時進行となりました。（本文より）